自動車メーカーの戦略、オモテとウラ
自動車メーカーの販売戦略で、一般には報道されないものがあります。「売る気のない製品」や「利益ゼロ製品」などの裏商品が隠れています。
売る気のない車
各メーカーには売る気のない自動車、つまり「オトリ」が隠されています。「オトリ」の自動車の特徴はコストパフォマンスやデザインが悪いことが特徴です。
オトリを使う理由は平均価格の引き上げと他の製品の好感度を上げるためです。
平均価格の引き上げ
ウォークマンFシリーズは3種類用意されています。
- 16GB:1万9800円
- 32GB:2万4800円
- 64GB:3万4800円
オトリは64GBモデルです。価格は64GBモデルだけ突出して高いため、Fシリーズ全体の平均価格が上がり、(ソニーが一番売りたい)32GBモデルがお買い得に見えます。
ウォークマンと同じ事を自動車メーカーでも行なっています。日産が2012年10月に販売した「ラティオ」はグレードが「S」「X」「G」の3つに分かれています。
オトリはGモデルです。価格はGモデルだけ突出して高いため、ラティオ全体の平均価格が上がり、(日産が一番売りたい)Xモデルがお買い得に見えます。(ただ、私にはGモデルが本当にオトリなのかはわかりません。)
日産によると、ラティオで一番売れているグレードは「X」です。消費者の購入対象は日産の戦略通りになったようです。
メーカーによっては最上級モデルの燃費を非常に悪くしているところもあります。オトリのおかげで他のモデルの好感度を上げることができます。
利益ゼロの車を販売
数年前から、高級な製品を扱うメーカーを中心に「利益ゼロ」の製品が販売されています。
レクサス CT200h
最近レクサスから「CT200h」が販売されました。
このCT200hの特徴は
- レクサス車の中で最も燃費が良い
- レクサス車の中で最も価格が低い
- 宣伝が多い
高性能にもかかわらず、価格が安い。利益が少ないにもかかわらず、宣伝が多い。つまり、CT200hは利益がほぼゼロ、または赤字です。なぜ、利益の少ない高級車を売るのでしょうか?
理由はレクサスの利用者を増やすためです。レクサスはアフターサービスランキング・ベスト1位の自動車メーカーです。(詳しくは自動車メーカーのアフターサービスランキング)しかし、欠点は「知名度」と「(価格が高いという)敷居の高さ」。
価格を低くすることで敷居の高さを低くし、以下のことを狙っています。
- お客がレクサス販売店に来店しやすくする
- CT200hよりも価格が高い車をお客に勧める
- レクサス車を利用してもらい、高いサービスで顧客を取り込み、レクサスのリピーターを増やす
ウォルクスワーゲン up!
RJC(特定非営利活動法人 日本自動車研究者&ジャーナリスト会議)が選ぶ、2012年にもっとも優れた輸入車に与えられる「2013年次 RJCカーオブザイヤー=インポート」にウォルクスワーゲンup!が受賞しました。
また、up!は2012年のワールドカーオブザイヤーにも選ばれています。
このup!にはABSはもちろんのこと、横滑り防止装置のESP、サイドエアバッグ、30km/h以下で作動する自動ブレーキまで標準装備して149万円という低価格が特徴です。
高機能にもかかわらず、価格を低くすることで、以下のことを狙っています。
- お客がウォルクスワーゲン販売店に足を運ばせる
- UP!よりも価格が高い車をお客に勧める
- ウォルクスワーゲンの宣伝になる
日本国内ではシェアが小さいウォルクスワーゲンですが、利益の少ない自動車を販売することにより、長期的な利益を自社にもたらします。
自動車業界のみならず、多くの業界で高級な商品を扱うメーカーが利益ゼロ戦略をとっています。
広告欄ではなく記事欄で広告する
一般に、消費者は広告よりも記事から得た情報を信じます。そこで、メーカーは新聞・雑誌・テレビなどのメディアにお金を払い、あたかも記者が書いたように、新製品を掲載します。
消費者は中立的な立場で報道していると誤解し、メーカーの宣伝を真に受けてしまいます。
特に、雑誌に掲載されている記事は、メーカーが頼んで書いてもらったのだろう、と感じるものが多数あります。