パソコンメーカーのウラ戦略

パソコンの販売戦略で、一般には報道されないものがあります。「売る気のないパソコン」や「利益ゼロパソコン」などの裏商品が隠れています。また、デマを流す戦略も解説します。

実は、売る気のないパソコンが隠れている

各メーカーには売る気のないパソコン、つまり「オトリ」が隠されています。「オトリ」のパソコンの特徴はコストパフォマンスやデザインが悪いことが特徴です。

オトリを使う理由は平均価格の引き上げと他の製品の好感度を上げるためです。

平均価格の引き上げ

ウォークマンFシリーズは3種類用意されています。

  1. 16GB:1万9800円
  2. 32GB:2万4800円
  3. 64GB:3万4800円

オトリは64GBモデルです。価格は64GBモデルだけ突出して高いため、Fシリーズ全体の平均価格が上がり、(ソニーが一番売りたい)32GBモデルがお買い得に見えます。

ウォークマンFシリーズの平均価格の引き上げ

ウォークマンと同じ事をパソコンメーカーでも行なっています。エプソンダイレクトの場合、「Pro7500」がオトリです。

エプソンダイレクトのデスクトップの中でPro7500が突出して価格が高いです。また、新型のOSやCPUなどが他のモデルより半年程度遅れて採用しています。エプソンダイレクトが売る気のない「オトリ」製品です。

エプソンダイレクトPro7500

利益ゼロのパソコンが販売されている

数年前から、高級な製品を扱うメーカーを中心に「利益ゼロ」の製品が販売されています。

自動車業界

パソコンではなく、自動車のお話になりますが、最近レクサスから「CT200h」が販売されました。

lexusCT200h

このCT200hの特徴は

  1. レクサス車の中で最も燃費が良い
  2. レクサス車の中で最も価格が低い
  3. 宣伝が多い

高性能にもかかわらず、価格が安い。利益が少ないにもかかわらず、宣伝が多い。つまり、CT200hは利益がほぼゼロ、または赤字です。なぜ、利益の少ない高級車を売るのでしょうか?

理由はレクサスの利用者を増やすためです。レクサスはアフターサービスランキング・ベスト1位の自動車メーカーです。(詳しくは自動車メーカーのアフターサービスランキング)しかし、欠点は「知名度」と「(価格が高いという)敷居の高さ」。

価格を低くすることで敷居の高さを低くし、以下のことを狙っています。

  1. お客がレクサス販売店に来店しやすくする
  2. CT200hよりも価格が高い車をお客に勧める
  3. レクサス車を利用してもらい、高いサービスで顧客を取り込み、レクサスのリピーターを増やす

自動車業界のみならず、多くの業界で高級な商品を扱うメーカーが利益ゼロ戦略をとっています。

パソコン業界

パソコン業界の場合、代表的なのはエプソンダイレクトです。アフラーサービスランキング1位ですが、価格が高いことが欠点です。(詳しくはパソコンメーカーのアフターサービスランキング

最近、Sシリーズという低価格モデルを多数ラインナップしました。Sシリーズの特徴はレクサスと同様に、安くて宣伝が多いことです。

レクサスと同様に、エプソンダイレクト狙いは

  1. 低価格設定で、知名度をあげる
  2. より価格が高いパソコンをお客に勧める
  3. Sシリーズを利用してもらい、高いサービスで顧客を取り込み、エプソンダイレクトのリピーターを増やす

エプソンダイレクトSシリーズ「TY1100S」の場合、「2.より価格が高いパソコンをお客に勧める」が顕著に出ています。商品紹介ページ内に、よりグレードが高い「MR4300」を勧める広告を掲載しています。

TY1100S商品紹介ページ

おそらく、アフラーサービスランキング2位のパナソニックも同様の「利益ゼロ」戦略を出すでしょう。

最大の宣伝方法:第3者に他社製品を批判してもらう

有名な大学教授や芸能人がMacを利用している写真や映像を見ることがあります。本人がMacを好んで使っている場合もありますが、アップルから報酬をもらってMacを使っている人もいます。

報酬をもらってMacを使っている有名人の特徴は、ブログや雑誌などでアップルを賞賛していることです。詳しくは大学教授がMacを絶賛するのは金目当てで。

有名にブロガーに報酬を渡して「このMacBookを使って10年目、故障率ゼロ」や「この間、1メートル下の水たまりにiPhoneを落としたけれど壊れなかった」など、ウソの情報を書いてもらいます。

ネットにデマを流し、自社製品の宣伝を行います。

広告欄ではなく記事欄で宣伝する

一般に、消費者は広告よりも記事から得た情報を信じます。そこで、メーカーは新聞・雑誌・テレビなどのメディアにお金を払い、あたかも記者が書いたように、新製品を掲載します。
新製品の宣伝を広告欄ではなく記事欄で広告する

消費者は中立的な立場で報道していると誤解し、メーカーの宣伝を真に受けてしまいます。

特に、雑誌に掲載されている記事は、メーカーが頼んで書いてもらったのだろう、と感じるものが多数あります。その一例が週刊ダイヤモンドのアップルの特集です。

記事の中身は、iPhone5のメリットを多数掲載する一方、アップルの不正には触れず、アップルの功績を讃えています。

批判は最大の宣伝になる

選挙になると、与党は野党の、野党は与党の批判を徹底的に行います。なぜ、それほど批判をするのか?批判は最大の宣伝になるからです。

雑誌の記者やブロガーに報酬を出し、ライバルメーカーのデメリットを報道してもらいます。よくあるのが、自社の新製品とライバルメーカーの製品を比較する特集です。

ライバル製品のデメリットを強調し、自社製品のメリットをさり気なくアピールします。その一例が週刊ダイヤモンドのソニー特集。

記事の中身は、ソニーの経営と製品のデメリットを強調し、アップル製品をさり気なく勧める内容です。

「デザイン」と「高機能」を売りにしているアップルにとって、同じく「デザイン」と「高機能」を売りにしてきたソニーは邪魔な存在です。ソニーの評判を悪くすることで、アップルの価値を高める狙いです。